TUDOR(以下、チューダー)は、かつて日本では一部の時計好きにしか知られていなかったブランド。
それが近年、ファッション感度の高い若者や女性からも注目されているのは、過去のチューダーを知る人からすれば、にわかに信じられないことかもしれません。
この記事では、そんなチューダーの過去・現在・未来について書いてみようと思います。
チューダーは、既に手放してしまった時計も含めると13本を所有してきました。
予めお伝えしておきたいのは、チューダーの評価は今後さらに上がる可能性があり、時計としても資産としても将来性がかなり期待できるということ。
少しでもチューダーに興味をお持ちでしたら、ぜひ最後までチェックしてください。
チューダーの誕生と「プアマンズ・ロレックス」と揶揄された過去
チューダーは、1926年に腕時計のディーラー兼メーカーであるヴーヴ・ドゥ・フィリップ・ヒュンター氏によって立ち上げられたブランドです。
その後、1930年代にロレックスの創業者であるハンス・ウイルスドルフ氏がスイスのジュネーブに会社を設立し、チューダーの独占的使用権を取得しています。
ロレックスは今でこそ時計業界の最高峰に君臨していますが、そんなロレックスでもかつては経営に苦慮する時代がありました。
また、同社製品の強みであるオイスターケースやオイスターブレスを、広く世の中に普及させるための方法を模索し続けていました。
そんな折、ふと汎用ムーブメントを搭載するなどしてコストダウンを図り、ロレックスとは別の安価で高品質な時計を販売することを思い付きます。
そういった経緯で、いわばロレックスの廉価版を供給するためのブランドとして位置付けられたのが、このチューダーだったというわけです。
となれば、下記をはじめとするチューダーの歴代モデルが、ロレックスのデザインに酷似していたのも、ある意味必然といえるでしょう。
- レンジャー
- サブマリーナ
- クロノタイム
しかし、当時のチューダーの評判といえば「※プアマンズ・ロレックス」とも呼ばれていたように、決して良いものばかりではありませんでした。
ちなみに、これはあまり知られていないことですが、1970~1990年頃にスイスのリーベルマン・ウェルシュリー社という総合商社によって、チューダーが日本で正規展開されていた時期がありました。
ただ、当時のチューダーは人気も業績もあまり芳しくなかったようで、一度撤退を余儀なくされています。
昨今チューダーの人気が高まっている理由
2010年にチューダーは、1970年代初頭のクロノグラフからインスピレーションを得たヘリテージクロノ(Ref.M70330N)を発表。
2012年には、こちらも1970年代の名作、通称「イカサブ」を再現したブラックベイ(Ref.M79220R)とペラゴス(Ref.M25500TN)の2つのモデルを相次いで発表しました。
これらは、言ってみればチューダーのリバイバル製品の先駆けであり、今日の快進撃のきっかけであったことも間違いありません。
2018年には、チューダーの日本上陸と同時にGMT(Ref.M79830RB)と58(Ref.M79030N)がブラックベイシリーズに加わり、どちらも大ヒットを飛ばしたのは記憶に新しいところです。
2021年にはシルバー、ブロンズ、セラミックといった異素材のモデルが拡充されたことで、ブラックベイの人気と注目度はさらにアップ。
今やチューダーは、ロレックスのディフュージョンブランドというイメージからは脱却し、独自の路線を歩みつつあります。
■41mmスチール製ケース ■マニュファクチュール キャリバーMT5652 (COSC)搭載 ■パワーリザーブ約70時間 ■リベット付きスチール製ブレスレット |
|
■39mmスチール製ケース ■マニュファクチュール キャリバーMT5402 (COSC)搭載 ■パワーリザーブ約70時間 ■リベット付きスチール製ブレスレット |
|
■39mmシルバー925製ケース ■マニュファクチュール キャリバー MT5400 (COSC)搭載 ■パワーリザーブ約70時間 ■サファイアクリスタル付きオープンケースバック |
|
■43mmブロンズ製ケース ■マニュファクチュール キャリバー MT5601 (COSC)搭載 ■パワーリザーブ約70時間 ■ブロンズ製逆回転防止ベゼル |
その一方で、未だにロレックスとは深い関わりがある点も、ファンにとっては大きな魅力になっています。
修理やオーバーホールを日本ロレックスに依頼できるのは、チューダーが持つ付加価値の1つです。
ディフュージョンブランドからは脱却しつつも、随所にロレックスを感じさせるデザイン。
それでいて、ロレックスにはない大胆な素材使いなど、時計としてのキャラクターが被らないように、上手く棲み分けができているようです。
棲み分けといえば、価格設定についてもかなり戦略的に行われています。
チューダーとロレックスの「同類」のモデルを比較してみると、どれもチューダーの定価はロレックスの半額か、それよりも少し安価に設定されているのは、決して偶然ではないでしょう。
ロレックスは高価な上に、現在は正規店で希望のモデルを購入するのがかなり難しくなっています。
そのような状況で、よりチューダーの魅力とコスパの良さが際立ち、ファンを惹き付けているのではないでしょうか。
【予想】チューダーの将来はどうなるか?
2021年8月と2022年1月に、チューダーとロレックスは揃って価格改定(値上げ)を行いました。
その後も両ブランドは、年1~2回のペースで価格改定を行っています。
- パテックフィリップ
- オーデマピゲ
- ヴァシュロンコンスタンタン
ロレックスが上記のような、いわゆる「雲上時計」と呼ばれる日も、そう遠くないかもしれません。
ロレックスも、現在の異常なまでの需要過多をただ見過ごしているわけにはいかないでしょう。
需要過多を解消するには、より高級路線にシフトすることでターゲットを富裕層に絞るというのは、企業の戦略としても正しいはずです。
安易に供給量を増やすのはブランド価値の低下を招く恐れがあり、ロレックスがそのようなミスを犯すとは到底思えません。
チューダーは、今のロレックスと同等まではいかないにしても、それに近いポジションを目指しているかもしれません。
ロレックスの購入を断念した層が今後チューダーにシフトし、チューダーの需要がより拡大する可能性も十分に考えられます。
そうなれば、チューダーもある程度高級化を進めていくのが、必然の流れといえるでしょう。
ファンの多くも、価格に見合った価値があれば、今よりも高級なチューダーを喜んで受け入れるのではないでしょうか。
チューダーが、私を含め大衆にとっての憧れのブランドになる日も来るかもしれません。
メーカーとしての実力も確実に上がってきているので、その将来がとても楽しみです。