機械式時計のオーバーホール料金は、安くても2~3万円はします。
クロノグラフやムーンフェイズなど機構が複雑だったり、シンプルな3針時計でも部品交換が多かったりすれば、10万円以上することもあります。
そのため、時計ユーザーにとって、オーバーホールとは「できればしたくないもの」という思いが大半を占めているのではないでしょうか。
しかし、時計を愛用し続けるにはオーバーホールは不可欠で、ノーメンテナンスではいつか必ず不具合が起きてしまいます。
では、オーバーホールをしないと、具体的にどのような不具合が起きてしまうのでしょうか。
機械式時計によくある不具合
- 時間が極端に進む
- 時間が遅れたり止まったりする
- ガラスの内側が曇る
- リューズ周りが故障する
以下にそれぞれについて説明します。
時間が極端に進む
機械式時計にとって磁気は大敵です。
時計の精度が気になる、つまり時間の進み具合が気になる場合は「磁気帯び」が疑われます。
磁気帯びは時計をついうっかりスマホ、パソコン、スピーカーなどの上に置いてしまうだけでも起こり得ます。
意外なところでは、マグネットが付いたバッグから荷物を出し入れする際にも、磁気帯びしてしまうことがあります。
ただ、時間が進む原因が単なる磁気帯びなら、磁気抜きをするだけで簡単に元の精度を取り戻せることもあります。
磁気抜き自体は、購入店や修理店にて比較的安価な料金で受け付けてもらえます。
時間が遅れたり止まったりする
時計が遅れたり止まったりする場合は、いくつかの原因が考えられます。
まず思い付くのは、ムーブメントに塗布されている潤滑油が、温度、湿度、経年などの影響によって劣化または酸化して、部品の動きを妨げていることです。
あるいは、ゼンマイを巻き上げる部品(ローター)を支えている軸(ローター真)が、度重なる負荷により摩耗している可能性もあります。
摩耗が進めば、ローター真はローターを十分に支えられなくなり、その結果歯車など他の部品と擦れたり、大量の鉄粉を発生させたりするようになります。
そうなってしまうと、もはやオーバーホールだけでは済まず、大がかりな修理が必要になることも。
他にも、ゼンマイ切れやゼンマイの絡みが原因で、時間が遅れたり止まったりすることがあります。
ガラスの内側が曇る
普段リューズを忘れずに締めているのに、あるいは水気のある場所で時計を使用したわけでもないのに、ガラスの内側が曇ることがあります。
この場合、リューズ周りや裏蓋のパッキンが劣化している可能性があります。
パッキンはゴム製のものが多く、経年による劣化は避けられません。
放置しておくと、針や文字盤、ムーブメントの錆や腐食へと繋がってしまう恐れもあります。
最悪、針や文字盤の交換ともなれば、部品代が高額になってしまうことは容易に想像が付きます。
リューズ周りが故障する
リューズは普段から操作する機会が多く、その分不具合が出やすい箇所といえます。
- リューズが引けない
- リューズが抜ける
- リューズが硬い、回らない
- リューズが緩い、空回りする
- リューズを巻くと異音がする
- リューズをねじ込めない
時計を長く使用していれば、リューズだけでもこれだけの不具合が出てくる可能性があります。
それぞれの原因の説明はここでは割愛しますが、どれもメンテナンスが必要な不具合です。
ただ、オーバーホールではなく部分修理で済む場合も多く、そうなればさほど費用もかからないかもしれません。
ゴミや汚れの詰まりを取り除くだけで、解決する場合もあります。
なので、早めのメンテナンスを心がけましょう。
長く使い続けるには定期的なメンテナンスが大事
オーバーホールの頻度については諸説ありますし、実際に不具合が出るまではオーバーホールをしないという人も多いのではないでしょうか。
ただ、ムーブメントの油切れやパッキンの劣化を未然に防ぐには、オーバーホールは3~4年に1度を目安にするのが良いでしょう。
特に油切れを起こさないことは、消耗品以外の部品の劣化や摩耗を防ぎ、大きなトラブルを回避することにも繋がります。
不具合が見つかれば、都度それを小さなうちに取り除くことで、長期的には維持費が抑えられることも期待できます。
そして、何より大切な時計を日々安心して使えるようになります。
機械式時計は定期的なメンテナンスを施すことで、100年以上使い続けることも決して不可能ではありません。